日本小児胆汁酸研究会の発展的解消について

入戸野 博

順伸クリニック胆汁酸研究所


 日本小児胆汁酸研究会(本研究会)は、平成26年の第23回の研究会を最後に、平成27年からは成人領域における臨床及び基礎に関する研究を対象とした第37回日本胆汁酸研究会に合流することになりました。これまでに毎回の教育講演にご協力いただいた多くの先生方に対しまして、この場を借りて深謝します。


 本研究会では、すでに第1回から第15回までの研究会における演題名の目録を中心にまとめた小冊子を発行いたしましたが、今回23年間続いた会を発展的に閉会するにあたり、第16回から23回研究会までの演題名及び教育講演の抄録や、運営委員のこれまでの感想や想いなどを掲載しました。本研究会を閉じるにあたり、会のこれまでの歴史と、今後の展望について簡単に述べたいと思います。


 第1回研究会は、平成4年2月に東京駅大丸8階の会場で開催され、協賛は第一化学薬品(株)の東京第1営業所にお願いしました。前年に私が研究会設立を提案し、田澤雄作先生、松井陽先生、新沢毅先生、木村昭彦先生そして入戸野の5名が世話人となり、故加藤英夫先生(国際親善総合病院院長、順天堂大学名誉教授)に顧問をお願いして発足となりました。会員数も少なく、会場の確保も悩みの種でした。研究会は、東京大手町のビル、第一化学薬品(株)の会議室、順天堂大学、米子の皆生温泉、東北大学艮陵会館などを転々とした後、第14回から23回まで御茶ノ水の「山の上ホテル」に定着しました。


 加藤英夫先生のご逝去により、平成8年の第5回研究会から、藤間貞彦先生(故 北海道医療大学薬学部名誉教授)に顧問をお願いし、その後田澤雄作先生、新沢毅先生の代わりに伊藤進先生、宇根瑞穂先生、虻川大樹先生にも世話人をお願いして、協賛も積水メディカル(株)へ移行した経緯があります。


 研究会は、一般演題が5~7題と教育講演が1題の規模でした。当時の興味は、小児の胆汁うっ滞症が中心でした。小児の胆汁酸代謝の成長に伴う変化は、新規胆汁酸の発見や分析技術の進歩に伴い、胆汁酸地図が塗り変えられています。低出生体重児から成熟児へと、成熟度の違いによる胆汁酸代謝(藤間先生が発見された1β-水酸化胎児性胆汁酸や抱合など)の消長すなわち、血清、尿,便(胎便)などが研究対象でした。


 本研究会で木村昭彦先生らによる先天性胆汁酸代謝異常症(inborn errors of bile acid metabolism: IEBAM)関連疾患に対する報告がきっかけとなり、IEBAMのスクリーニングの機運が高まりました。その後、藤間貞彦先生のご指導により、本邦のIEBAMハイリスク・スクリーニングが平成8年7月から開始され、共同研究でこれまでに6種類20症例ものIEBAMが発見されたのです。当然、それらの臨床像、臨床検査値の特徴、経口胆汁酸療法などが研究会の主要なテーマとなりました。胆汁酸研究所で異常胆汁酸が発見された症例は、久留米大学の木村先生により遺伝子解析され、本邦におけるIEBAMの確定診断システムが確立されたのです。


 数年前から牧野勲先生から大人の胆汁酸研究会へのお誘いがあり、相互交流を兼ね、牧野先生や滝川先生が小児胆汁酸研究会に参加していただき、私と木村先生が胆汁酸研究会にお邪魔するようになりました。


 平成25年の第22回研究会は、日本小児栄養消化器肝臓学会と第13回アジア汎太平洋小児栄養消化器肝臓学会との合同開催にjointし、米国のShneider教授とスエーデンのStrandvic先生に招待講演をしていただきました。平成26年の第23回を最後に日本小児胆汁酸研究会は発展的解消し、胆汁酸研究会に合流することになりました。これまでに教育講演にご協力していただいた多くの先生方には、厚く御礼を申し上げます。


(日本小児胆汁酸研究会記念誌(1992~2014年)から引用